コミュニティ住宅であるシェアハウスは都市型のビジネス
--実はこのインタビューでは2005年にゲストハウスの先駆者としてオークハウス・山中武志さんにお話を伺っています。傍目には1棟あるいは一部屋の住まいの中に共有スペースを作り、何人かで住むという外見的なスタイルは似ているものの、実は根本的な発想からしてゲストハウスとシェアハウスには大きな違いがあるのだとか。
水谷「シェアハウスという言葉、概念は8年前、私どもチューリップ不動産が作ったものです。ゲストハウスが外国人向きの礼金・敷金を無くし、手頃に長期滞在を可能にする長屋だとすると、シェアハウスはコミュニティ住宅。実家を離れて暮らす、コミュニティを必要とする人たちを対象にしており、非常に都市型のビジネスです」
--チューリップ不動産でシェアハウス居住の対象として想定しているのは、地方から首都圏に出てきて、一人で暮らす女性。親族や友人たちと離れて暮らし、帰属するコミュニティを求めている人たちだと言います。
水谷「学生の場合、学校が生まれ育った街、実家などに代わる第2のコミュニティになることが多いので、あまり他のコミュニティを必要としません。また、社会人でも正社員であれば会社に帰属意識を持ち、この人たちもまた、他のコミュニティを求めることは少ないようで、当社の入居者の多くはキャリアアップを目指す、アルバイト、契約社員など。シェアハウスはそうした人たちが自己投資のため、家賃を抑えて都会暮らしをできるようにする、そんな場所なのです。私はそうした人たちがシェアハウスで孤独な一人暮らしではなく、自立して充実した暮らしを経験し、それが小さいけれど確実な成功体験、セルフエスティームにつながってくれれば良いと考えています。そうした成功体験があれば、人生はより良いものになると思うのです」
--なるほど。確かに、そうした流動層というか、浮遊層が成り立つのは都会だけです。ということはこのビジネスは首都圏限定ということでしょうか。
水谷「今のところは首都圏限定。しかも、足立区を除く23区内です。実際には足立区以外でも女性が住みたがらないだろう場所はお断りしています。女性が住みたいと思う街場所でなければ運営が成り立たないだろうと考えているからで、女性が夜歩いていて危険を感じるような場所はダメです。
だから、実際、場所を選定する場合には社員を立たせて、夜間も危険がないかどうか、厳密にチェックします。ただ、他の大都市圏や政令指令都市など地方の中核都市レベルでは可能になるかもしれません。その辺りはコンサルタント会社その他と提携、今の仕組みをカスタマイズしていく必要があると考えています。 ただし、これは弊社の場合だけ。いろいろなコンセプトの会社がありますから、そこまで地域を絞らないという会社もあるだろうと思います」
--3年前にテレビでシェアハウスの存在が知られるようになって以来、住みたい人の増加とともに、手がける会社も増えています。その理由は簡単で、収入だけで見れば増えるケースが多いと思われるからです。 例えば1棟の4LDK一戸建てを通常の賃貸として貸す場合に賃料が10万円だとします。それをシェアハウスにして4部屋にそれぞれ違
う人が住むとしたら、一人当たりの賃料が5万円だとしても20万円。また、部屋ごとに住んでもらうほうが空室リスクも減ります。 そのため、シェアハウスを手がける会社はここ2〜3年で増えており、その中にはいろいろな会社があると思います。大家さんの側でも認識は高くなっているのではないでしょうか?
水谷「賃貸フェアなどに行くような大家さんは理解してくださっているようですが、一般的にはまだまだだと思います。
それに、シェアハウスは今、法的には曖昧な存在。そのため、危ない部分もあり、それがハイリターンにつながっています。その辺りの関係を理解せず、利益だけで考えるのは危険です」
--1軒の家に複数の人間が住む場合、それをなんと解釈するか。建築基準法、消防法などいろいろな法が絡まり、今のシェアハウスは手がける各社がそれぞれの判断、それぞれの方法で成り立たせている状況です。 そのため、単純に所有していれば利益が出るというものではなく、リスクも含めて知っていないと危険というわけです。
水谷「投資の要素が強いので、土地を持っている人、投資家マインドのある人でなければ難しいでしょう。いずれ、法が整備されてくればハウスメーカーなども手がけるようになるかもしれませんが、その時には今のような先駆者利益は見込めないでしょうね」
--となると、大家さんと運営する会社との契約もかなり複雑なものなのでしょうね。
水谷「基本的には管理委託を受ける形ですが、実際にはオーナーに合わせた内容の契約になっており、いろいろな契約形態があります。契約書も一般のものよりもはるかに細かく、一般的な契約書を4ページの平がなだけの絵本だとすると、当社の契約書は分厚い実用書のようなものです。
もちろん、他社さんは他社さんでそれぞれ違った契約書になっているでしょうね」
--う〜ん、それでは勉強していない大家さんは太刀打ちできませんね。
水谷「いえいえ、理解するつもりのある、努力しようという方には付き合わせていただきますよ。でも、なんでもかんでも不動産会社に任せておけば良いと思っていてはダメです」
--大家さんも変わらなくてはいけませんね。でも、語弊を恐れずに言えば、大家さんには勉強しないで欲しい、事態を分からずにいて欲しいと思っている不動産会社、管理会社もあるのではないでしょうか。
水谷「そのほうが自分たちに利があると思っている会社もあるようですからね。ですから、大家さんは自分で勉強すると同時に、良いビジネスパートナー、例えば管理会社を選ぶことが大事です。でも、これが意外に難しい」
--何か、そう思われるご経験があったのですか?
水谷「ええ、実家が名古屋でやはり大家業をやっており、いずれは代替わりします。そこで管理会社を探してみて、難しいなと思っています。東京でなら、内情まで含めてよく分かっている会社も多くありますからいいのですが、名古屋ではそうもいきません。いろいろ当たってみると、いまだに定期借家契約を使ったことのない会社など意識の低い会社も少なくありません」
--それはちょっとあんまりです。
水谷「最低でも日管協(*)に入っていて、勉強会などに出てきている、その程度以上の会社でないとダメかなと思っています」
(*)財団法人日本賃貸住宅管理協会 http://www.jpm.jp/
--ちょうどこれからの数年は代替わりをする大家さんも多いと思います。そういう人たちから、よく管理会社への不満を聞くのですが、大家さんも勉強して、上手に選んでいかないとダメですね。
水谷「中には一方的に管理会社を叩くオーナーさんも少なくありませんが、ビジネスは関係する誰かだけが勝つ状態ではうまく行きません。Win-Win、つまり、関係する両者ともにメリットがある状態であることが成功につながるのです。シェアハウスの場合には大家さん、入居者、運営会社の三社が全部Win-Win-Win、日本の言葉で言えば三方良しという状況が最高の収益物件につながると考えています」
--自分だけが得したいという考えではビジネスはうまく行かない、そういうことですね。これからの大家さんにはそうした視野で経営に当たっていただきたいものです。本日はありがとうございました。
●インタビュー後の一言
水谷さんはシェアハウスはホテルと賃貸物件の間にあるものと考えていらっしゃるそうです。そう考えると、儲かりそうだからというだけで手を出すのは考えもの。 実は古い一戸建てを所有している方からはたまにシェアハウスにしてみようと思うが?と聞かれることがあるのですが、コンプライアンスの点、運営の点、また改装にかかる費用等をまず把握してからでないと後でたいへんなことになります。
しかも見積もりはシェアハウス運営業者のキャリアや運営方法によっても大きく違いがでます。値段だけで判断すると思っていたことと大きく違うことにもなりかねないので、注意が必要でしょう。
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